吹奏楽団やオーケストラで高音の要であるフルートは、楽器を支えながら細かな指の動きと呼吸を用いて音を奏でます。フルート演奏されている方で、身体の張りや怠さ、疲労の強さを感じる方はいらっしゃるのではないでしょうか。
整体サロンHarmoniaにも市民吹奏楽団に所属していた経験があり、フルートを10年以上吹いているの女性スタッフがいるのですが、体の不調を訴えることがあります。
今回、フルート奏者が抱えるパフォーマンス低下につながる身体の不調を5つ紹介し、どうして体の不調が起こるのかを理学療法士が捉える解剖学・運動学の観点解説していきます。
では、フルート奏者の方によくある体の不調はどんなことがあるのでしょうか?
フルートを演奏する際、フルートを口、左人差し指、右親指の3点を中心として空中で保持した状態になり、肩に持続的な負担がかかります。
猫背といった不良姿勢で演奏を行うと、より首から肩にかけての負担が増えてしまいます。
また演奏時に呼吸を用いますが、息を吐く際に努力的に力を入れることがあるため肩に力が入ることがあります。
整体サロンHarmoniaのホームページ・ブログを見ている方の中でも、肩こりを検索されている方は多いようです。

フルート演奏の基本姿勢がやや左方向を向いた状態となるため、常に首の左側の筋肉が収縮している状態であり、張りやすくなります。
また猫背などの姿勢の崩れがあると、唄口に口を近づけに行くように頭を前に突き出してしまう姿勢となりやすく、首の後ろの筋肉に負担がかかります。
これらの筋肉が硬くなることで痛みや張りにつながり、ひどい場合は頭痛が起こることにもつながってきます。

肩こり同様、フルート演奏中は楽器本体を空中に保持しなければならないため力こぶと称される上腕二頭筋が張ります。
また、楽器の構え方によって腕にかかる負担が異なります。
楽器演奏中は、同じような位置で腕の高さを維持していなければならないことから、上腕二頭筋や三角筋といった筋肉が硬くなりやすく、疲労物質が溜まりやすくなると痛みを伴うようになります。
フルート自体はそこまで重たくないのですが、長時間同じ姿勢を保持すると、支えている筋肉が疲労を起こすため、比較的症状として起きやすいと思います。
フルート演奏は立って演奏することも多く、女性の場合はヒールを履いて演奏を行ったりします。
立ちっぱなしやヒールを履いて演奏することに加え、演奏会の緊張や呼吸の方法にて反り腰を強調する傾向になりやすく、腰の筋肉を多用して姿勢を支えることになるため、反り腰の伴う腰痛を感じる方は多くなるようです。
反り腰で演奏後に腰の張りや痛みを感じるというフルート奏者のお話はお聞きする機会が多いです。

フルートは、唄口が触れる下唇、左人差し指、右親指で支えて演奏します。
左手人差し指は、楽器本体を支えるために必要以上に付け根の関節を反らした状態で支えなければいけなくなるため負担がかかりやすくなります。
右手親指は、楽器を支えやすくするために人差し指の下の位置に来る位置に当てていることが多いです。この位置は、親指を小指側に閉じようとする力が持続的にかかるため負担がかかります。
楽器を支えるのが常であるため慣れてしまい指の筋肉が硬くなっていたりこわばっていることに気づいていない人も多いです。
気づいたときには痛みが…ということがほとんどでしょうか。

フルート奏者の身体の不調について5つとりあげてきましたが、どれもパフォーマンスを落とす原因となります。
フルート演奏中に上半身を左右に揺らしたり、呼吸のリズムに合わせて膝を曲げ伸ばししたり、左右への体重移動を行ったりすることで、身体への一部分への力みを減らし、リズムに合わせて身体を使い分ける方もいらっしゃいます。
では、どういった原因でフルート演奏中に身体の不調を感じてしまうのか、原因を紹介していきます。
フルートを演奏するに当たって防ぎようがないことは、左右非対称な演奏姿勢になることです。
一般的に右腕を身体の外側に構え、左腕を身体の内側へ構えることでフルートを保持します。

この姿勢の時点で、首の左側の筋肉が優位に働き、左右で身体の使い方が異なるため右腕・左腕で使う筋肉が異なり、楽器を含めた上半身位置が真っすぐ立っているときと異なるため、お腹周りの筋肉の使い方も左右で異なります。
フルートを構える際、『もっと音楽が好きになる 上達の基本 フルート』という書籍を参考にすると、上半身の向きは正面に対して30°〜45°傾けるとされています。
それに伴い、フルートは身体からやや離れた位置に構えることになります。

この構え方であれば、左肩・右肩ともに解剖学的に見ても比較的負担の少ない状態で演奏することができます。
しかし、吹奏楽やオーケストラでの演奏の際に、前後の席同士の幅が狭く、どうしても身体を斜め向きにできない場合、身体とフルートの位置関係が近くなってしまうことがあります。

この姿勢になると、解剖学的な肩関節の安定性が低くなってしまい、肩を安定させるために左胸を閉じる筋肉(大胸筋)、右肩・背中に開く筋肉(棘下筋・僧帽筋・菱形筋群)の働きが必要以上に入りやすく、左右の肩に負担がかかりやすくなってしまうのです。
フルート演奏中の姿勢でフルートを構える位置の次に多く見られたのが、頭の位置関係です。
本来、頭は上半身の上に乗るように位置していることで骨や靭帯、筋肉で重たい頭をバランスよく支えることができます。
しかし、顔を唄口に近づけるように前へ突き出してしまうと、頭の重心が上半身から外れてしまい頭が前へと落ちる負担がかかるため、首の後の筋肉が多くみられ、当店をご利用いただいたフルート奏者で肩こり・首の痛みを訴えていた方は、こちらの傾向が強いです。

首の不調を抱える方は、猫背の姿勢で演奏することも多く、背中の張りを感じることもあるかもしれません。
フルートの構えは、床と水平な高さに構えるのが基準ですが、フルート本体が水平ではなく、右下がりの状態で演奏し、右肩・肘がしたに下がった状態で演奏されている場合があります。

この姿勢の場合、頭が右側に倒れるのとともに、上半身も右に倒れるような姿勢となります。
すると、右首の痛みや、右肩の張り、右腰の痛みを伴いやすくなります。
右腕を空間保持するための筋力が十分ではなく、脇を締めるような位置にあることで肩を安定させようとする人に多い姿勢のように感じます。
この状態が続くと右の指のフィンガリングにのちのち影響を及ぼすようになります。
フルートを吹く方だけに限らず、楽器を演奏される方に共通すること。
それは、演奏することで体に掛かる負担に慣れてしまい、負担と思わなくなってしまうことです。
「練習するといつも腕が張るから」
「1日休めば張りが取れるから大丈夫」
そのような考えでいることが腕が張ること、指がこわばることが「普通なんだ」と錯覚してしまうという原因となり負担を溜め込む音楽家さんが多いのです。
さらには、アフターケアをするという習慣が日本の音楽家の方には少なく、
「うまく演奏ができないのは練習が足らないからだ」
「指が疲れてしまうのは楽曲に動きが最適化されていないからだ」
と練習量をただただ増やすというのもあるようです。
指導する側も、練習量が足りないからだと考えがちなため、練習をたくさんしなさいと宿題を出す方も多いかと思います。
しかし、練習などで繰り返し使っている腕・指の筋肉は疲労を起こします。
そして腕の張り・指のこわばりが現れることは当たり前で終わらせていい話ではないのです!
音楽家のパフォーマンスを落とす要因にしかなりません。
Harmoniaをご利用いただいている音楽家の方の多くが、腕・指のケアを受けた後「こんなに指が動くんだ」「難しいフレーズが楽に弾けた」といった感想をいうのです。
スポーツマンほど全身を動かすことはないにしても、肩から指先までは演奏中ずっと動かし続けハイパフォーマンスを出さなければいけないため【音楽家はアスリート!】という考えのもと、疲労したところのケアは必ず必要であると考えています。
これまでに挙げてきたことを踏まえて、普段の生活および演奏中の姿勢にて意識したほうが良いことをいくつか挙げていきたいと思います。
猫背は、上半身の柔軟性と低下させ、胸郭の拡張性が悪くなるため、呼吸がしにくい環境になるとともに、フルートを構える腕への負担が増えてしまいます。
そのため、猫背にならないよう頭の上から天井へ向けて紐で引っ張られたような感覚で姿勢を伸ばせるといいかと思います。
基本姿勢が正面に対して30〜45°開くということですが、上半身だけ開いてしまうと上半身に体を捻る力を必要としてしまうため、胸郭の広がりが悪くなり、呼吸がしずらくなってしまいます。
上半身と骨盤ともに開く姿勢を取ることが重要です。
右肩よりも右肘が後ろに位置するところでフルートを構えてしまうと、背中から肩の後ろの筋肉を必要以上に使ってしまい、肩こりや腕の疲労の原因になります。
フルート演奏で起こる身体の不調が起こる原因にて姿勢を上から撮った写真のように、唄口、右手、右肩で三角形をつくり、唄口の部分の角度が30〜40°になるように構えられると右肩の負担が骨格構造上少なくなります。
公民館やコンサートホールで練習をしていると、借りている時間ギリギリまで演奏練習をしていて、時間になったら楽器をしまって解散!ということも多いかと思いますが、疲労はそのまま残っています。
練習で溜まった疲労を抜くために少しでもストレッチができると張りや痛みを感じることなく演奏を続けられたり、演奏パフォーマンスを維持することにつながりますので、手のひらのストレッチや胸・背中のストレッチをしてみましょう!
特定の姿勢を保っていると、身体を休めただけでは筋肉の硬さが取れず、クールダウンをしていてもなかなか取れない張りが出てくるかもしれません。セルフケアをしていても取れない張りや違和感などは、楽器演奏中の身体の使い方をもとに、身体のケアをしてもらえる専門家に依頼するのもいいかと思います。
コンディショニングサロンHarmoniaは、音楽家向けの整体メニューとして音楽家のコンディショニングをかかげており、実際の演奏姿勢から身体の使い方における身体の負担を導き出し、張りや違和感、痛みといった体の不調に対応して、施術やストレッチ、低負荷でのトレーニング指導を行っています。
パフォーマンスアップのための解剖学に則った身体の使い方も指導できますので、お気軽にご相談ください!
今回は、フルート奏者に起こる身体の不調5選をが起こる原因と対処法について解説してきました。外から見た感覚と、実際に自分で実感しながら姿勢を調節するのとでは感覚が大きく異なります。
「腕が張っている」「指の動きにくさを感じる」といった症状は、身体に何らかの問題が生じている場合がほとんどです。痛みやしびれなどに変わる前に早めにケアをしておくことで不調を気にせず演奏が続けられる身体でいられます。
負担を抱えたままの演奏が続くことで、腱鞘炎やばね指、最悪の場合は局在性ジストニアといった諸症状に悩んでしまうことがあるかもしれません。そうなる前にぜひ整体サロンHarmoniaにご相談ください。
Harmoniaは『音楽家のコンディショニング』という音楽家向け整体メニューを行っています。ご利用者様の演奏姿勢・演奏感覚を尊重した上で、不調部位を演奏姿勢や演奏動作から探し出し、施術・ストレッチ・トレーニングで根本改善へ導きます。また、演奏姿勢や演奏動作における腕のポジションや脚のポジション、椅子に座っている姿勢から立って演奏する姿勢までをお客様とディスカッションをしながら一番いい状態を探していきます。
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