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ピアノ演奏者に肩こり・腕の張りはなぜ起こる?

ピアノ演奏者に肩こり・腕の張りはなぜ起こるのか解説しました。

 ピアノは、長時間イスに座ったまま演奏し、リズムの速い曲・ゆったりとした曲・高温から低音まで幅広く使う曲・力強く引く曲など様々な曲調があります。また、一度に練習される時間も1時間だけでなく2時間や3時間、長い場合は休憩をはさみながら8時間以上という方もおられます。

肩こり腕の張り・だるさを感じながらも練習を続けている方もおられるというお話も聞きます。中には過去ドアノブが回せなくなるくらいの手首の痛みを感じ、腱鞘炎になっていたという方にも出会ったことがあります。

では、なぜこのような症状が起きやすいのでしょうか。ピアノの演奏姿勢や身体の使い方を解剖学・運動学的視点からわかりやすく解説していきます。

肩こりや肩・腕の張りや痛みを感じるのはなぜ?

 肩・腕の不調はどうして起こるのでしょうか。いくつか原因をご紹介していきます。

アップライトピアノを演奏する女性

練習によるオーバーユース(使いすぎ症候群)

 まず考えられることは、オーバーユース(使いすぎ症候群)です。ピアノ演奏の姿勢は、常に肘を曲げた状態であり、手を鍵盤の上に乗せてはいますが、空間に腕を保持している状態です。

腕の重さは体重の約6%と言われており、体重50kgの方は片腕約3kgとなります。3kgの重さの腕が肩から吊り下がり、鍵盤に当てている手と重さを分散しながら空中に保持しています。

曲目を演奏できるように、また本番でいいパフォーマンスを発揮できるように練習を積み重ねていきますが、高音〜低音への手の移動や強く打鍵する場合など、腕を動かす頻度が多くなります。しかし、ピアノの演奏に慣れてしまっていると疲労が溜まり、肩・腕の筋肉が張っていても気づかないことも多く、張っている筋肉を圧迫することで初めて「あっ、痛い!」と気づいたりします。

オーバーユースにて硬くなった筋肉は、安静にしていただけでは張りや疲労感は取れるものの、残念ながら筋肉の伸び縮の機能までは元の状態には回復しません。指の疲労は現在進行系だけでなく、過去に学生時代にたくさん練習し、酷使してきた指の筋肉がアフターケアがままならなかったことで硬くなり現在に至るということも多いのです。アフターケアをする人も少ないため知らず識らずに疲労が積み重なり、痛いと気づいたときには腱鞘炎やばね指になっているのです。

猫背や巻き肩などによる筋力バランスの崩れ

肩こりや腰痛などを起こす方に多く見られる姿勢としては、猫背・巻き肩・頭を前に突き出した姿勢です。

背中・腰を丸めた状態で構えると肩の位置よりも肘関節の位置が前にずれることで、腕を空間に保持しておくためにかかる筋肉の負担が肩の前側にある三角筋、肘を曲げたまま支えるときに働く上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋、手のひらを下に向ける動きの際に活動する円回内筋・長母指屈筋にかかるようになります。この状態で演奏を続ける首・肩の負担が増え、肩こり・四十肩・テニス肘といった症状につながります。

猫背でのピアノ演奏姿勢は、肩や腕、肘周囲、手首の負担が必要以上にかかります。
猫背・巻き肩・腰を丸めての演奏姿勢

また、日常生活における姿勢も影響します。普段の姿勢が猫背だと、演奏姿勢も猫背になることが多くなります。

猫背だと、肩甲骨が外側に広がりやすく、背中の筋肉が働きにくい状態となります。すると背中にある筋肉である大菱形筋・小菱形筋・僧帽筋といった筋肉が適切な筋力を発揮できなくなり、筋力低下を起こし、姿勢を正しい位置に保つことが困難となります。

巻き肩や猫背では肩甲骨が外側に開きやすくなります。すると大胸筋や前鋸筋が硬くなりやすくなります。
猫背で機能しにくい筋肉(大菱形筋・小菱形筋・肩甲挙筋・僧帽筋)
肩甲骨を寄せる背中の筋肉(三角筋を除く)

背中の筋肉が弱くなると、胸の筋肉である大胸筋と肩甲骨から脇腹についている前鋸筋という筋肉が肩甲骨を安定させるために過剰に働くようになります。

猫背で硬くなりやすい大胸筋・小胸筋
猫背で硬くなりやすい前鋸筋

すると演奏時の腕の動きと共に肩甲骨を自由に動かすことができなくなり、肩関節を中心とした腕の動きになるため、肩・腕の筋肉である三角筋前部や上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋といった筋肉に疲労が起こりやすくなるのです。

肘関節の動きに関わる筋肉です。

そのため、できる限り骨盤の上に体幹・肩の関節が位置するように演奏姿勢を保てるようになることが身体の不調を少しでも少なくするためには重要です。

長時間の同一姿勢

 ピアノ演奏中の姿勢は片腕3kgの重さを鍵盤に手を添えながら空間に保持した状態とお伝えしました。椅子に座ったままの練習を2時間続ければ、2時間腕を空間で支えっぱなしの状態となり、腕を支えるために活動する肩・背中の筋肉である菱形筋群・僧帽筋・前鋸筋・三角筋前部・上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋などといった筋肉が疲労しやすくなります。

使い続けた筋肉は、縮こまったまま伸びる機能が低下するため、ストレッチを行い筋肉の伸びる機能をしっかりと取り戻して上げる必要があります。

また、肩甲骨・腕の動きが硬くなると上半身の動きも硬くなるため、上半身の柔軟性を獲得していくことも腕の疲労を軽減させるためには大事な要素になります。

ハルモニアでは、上半身の柔軟性を引き出す施術やストレッチ、身体を固めないためのボディワークをお伝えすることも多いです。

ピアノと身体との距離が合っていない

ピアノと身体との距離が合っていないことで、腕に掛かる負担は変わってきます。

身体とピアノとの距離が近いことでフィンガリング中の腕の操作が窮屈になりやすく肩関節に負担をかけやすくなります。逆に遠いと、腕を空中で保持している時間が長くなることで肩・腕周りへの負担が大きくなります。

いかに腕の重さを鍵盤にあずけながらフィンガリングができるかというのが重要になります。

脚の位置右脚は左脚よりもやや前に位置した状態でペダルに指の付け根から置いてペダルワークを行うため、かかとを軸にして足の指の付け根でペダルを押します。左脚は、その場にて人によりその場に楽に置いている方、移動する上半身を安定させるために支える役割として使っている方もいらっしゃるようです。

ここに曲に合わせて、両腕が体の前で交差したり、上半身を左右に移動させたり回旋させながら両腕の位置を調整したり応用的な動きが含まれていきます。

チェック

エレクトーンを演奏する方の場合、腕の位置が左右で異なり、肩・腕への力の入り方、上半身の入れ方はピアノと異なります。また、脚でもペダルワークが加わるため、脚を空中で保持しておくために太ももや股関節の筋肉を持続的に使っています。

自分の身体の疲労度チェック!

胸・腕の筋肉を押してみよう!

肩こり・腕の疲労がある場合は、胸の筋肉や肘の近くにある筋肉を圧迫すると痛みを感じます。

鎖骨の下のあたりや、力こぶの下側にある上腕筋という筋肉を押してみましょう!

座ったときの姿勢の崩れを確認しよう!

両腕・手首・指の問題は、実は上半身の負担からも起こりえます。チェックしたいのは以下の項目

  • 座った時に左右の肩の高さはそろっていますか?
  • 椅子に座った時に猫背になっていませんか?
  • 骨盤を立てることを意識するあまり腰を反りすぎていませんか?
  • 座った姿勢で両手をお尻の下に入れた時に体重が均等にかかっていますか?

これらのことは、すべて腕や腰、股関節に負担としてのしかかる姿勢となります。主観的に傾いていることが自覚できない場合は、姿見鏡の前に椅子を持っていき座っている姿勢を自分で確認するか、座っている姿勢をスマホなどで撮影してもらい、客観的に姿勢を捉えてみると良いかと思います。

崩れている座位姿勢の例となる写真です。右肩が下がり骨盤に比べ上半身が左へずれてしまい、重心線が左のお尻にずれています。に

載せている座位姿勢の写真ですが、

  • 右肩が下がり
  • 脊柱が左側に凸の弯曲
  • 重心線が左お尻にずれている

例になります。こういった姿勢になると、左脇腹の筋力低下や右脇の下から脇腹にかけての柔軟性低下、左首〜肩の張りといった症状がみられたりします。

ピアノ演奏における体の不調に対する対処法4選!

今まで上げてきた、ピアノ演奏における不調の原因に対して、どのような対処法があるのか4つご紹介していきたいと思います。

ピアノの演奏環境を整える

 まず実行しやすい環境設定についてお話します。

ピアノの椅子の高さを調節する

 ピアノの椅子の高さと腕の負担、何が関係あるの?と思う方も多いのではないでしょうか。実は、椅子の高さで、肘と手の位置関係を調整することが可能です。

ピアノ演奏中、肘が手より低いと上腕にかかる負担が増える

写真を見てもらうと一見普通に演奏しているように思いますが、実は腕に負担のかかる演奏姿勢です。

手首の位置よりも肘の位置が低い状態での演奏は、肩から肘にかけての筋肉に負担がかかり、疲労しやすくなります。手首も必然的に曲げた状態となり、指の使い方も第三関節(MP関節)を曲げた使い方となるため、指を曲げる筋肉にも負担がかかります。

肩・腕の負担を減らすためには、鍵盤に手を置いたときに手首が肘と同じ高さ〜少し下に位置するように調節してみましょう。手首よりも肘の位置があまりに高いと猫背の原因になりますので、微調整は自分の演奏しやすいところで行ってください。

ピアノと身体との距離を調節する

 ピアノと自分の上半身との位置関係ですが、遠すぎると腕を鍵盤まで伸ばす動作が必要となり、肩周囲の負担が増えるとともに腕の重心が身体から遠い位置に位置するため猫背になりやすくなります。

反対に身体が近いと、肘が身体よりも後ろに引けやすい状態になり上腕に力みを生じやすい状態となります。

ですので、鍵盤に手を添えた際に肘の前面、上腕に力みが出ない距離感に調節していただくと良いかと思います。

猫背の場合は姿勢を正して座る

 猫背は、楽器演奏にとって負担のかかる姿勢の典型的な例です。

肩・腕の負担が増える猫背での演奏姿勢

腕の疲労だけでなく、肩こりや首の痛みが起きやすくなるのも猫背が大きく関係します。前述した椅子の高さピアノと身体の距離感を調整するだけでも猫背の予防になります。

写真の女の子の場合、骨盤が後ろに寝てしまっている状態であるため、股関節の付け根にある腸腰筋という筋肉や、背筋を伸ばすために必要な脊柱起立筋という背筋の弱さもあるため意識的に背筋を伸ばすよう意識していく必要があります。

その際、頭の直上から紐をつけて天井へ引っ張られているように姿勢を正すことを意識してもらうと良いでしょう。

チェック

椅子の高さやピアノとの距離に関しては、別の記事にて詳しく紹介しています。

ピアノ演奏時に感じる手首の痛み・違和感は、ピアノと椅子との距離に関係することはご存知でしょうか?運動学・解剖学的に身体に掛かる負担を解説しています。 ピアノ演奏時に感じる手首・前腕の痛み・違和感は、ピアノと椅子との距離に関係する!

合わせて読んでみてください!

硬くなった肩甲骨・腕・指の筋肉をストレッチして動きやすい身体に!

硬くなって張ってしまった筋肉は、ストレッチにてほぐすのも重要です。ストレッチをいくつかご紹介します。

肩・肩甲骨周りの筋肉をほぐすストレッチ

肩甲骨・肩関節を動かして、硬くなっている筋肉を伸び縮みさせて血行を促し、ほぐしていく方法をご紹介します。

YouTubeにて上半身から肩甲骨周囲をほぐすストレッチやエクササイズを紹介したライブ配信のアーカイブがありますのでそちらを掲載します。

運動する目安は、肩甲骨周りがしっかりとポカポカしてくるかどうかです。
ポカポカしてこないということは、血行不良が起きているため肩甲骨周りの筋力低下が疑われます。

休憩を取りつつ、少しポカポカしてくるまで動かしてみてください。
筋肉痛が出た場合は、1〜2日程度休息日を入れながら行ってもらうと段々と強化されてきます。

ストレッチ・体操でダメなら、筋トレが必要な場合も

 環境設定の見直しやストレッチ・体操などをお伝えしましたが、これらのことを行っても変化がない場合は、体幹を支えるために重要なインナーマッスルと呼ばれる筋肉が弱くなっており、猫背や巻き肩などの姿勢の崩れが起こっています。

姿勢の崩れを元通りにするために、腹横筋や内腹斜筋、骨盤底筋群や腸腰筋を鍛えるトレーニングが必要となります。方法としては、

  • バランスボールに骨盤を立てた状態で座ったまま静止する
  • バランスボールに座った状態で腰が丸まらないよう注意しながら軽く足踏みをする
  • 足上げ腹筋(下腹部・股関節の付け根で脚を持ち上げてくるようにする)

などです。

まとめ

 ピアノの肩こり・腕の張りが起こる原因と対策についてご紹介しました。

ピアノ演奏される方の腕・指の不調はオーバーユース(使い過ぎ症候群)、肩こりに関しては、腕・指の不調に加えて猫背や巻き肩などの不良姿勢であることなどに由来しています。

椅子の高さや距離に関して気にされていた方は多いかと思いますが、疲労や姿勢の崩れ、筋力バランスの崩れも関係することも頭に入れておきましょう。

セルフケアの方法も解説しましたが、ストレッチを色々試したけど良くならない、トレーニングをやって身体を整えたいけど何やったらいいかわからない場合もありますよね。その際は、整体サロンHarmonia(ハルモニア)にご相談ください。

熊谷市石原にある整体サロンHarmonia(ハルモニア)では、身体に掛かる負担を全身から総合的に判断し、個人個人に合った施術を行っています。
演奏姿勢を元にして身体にかかる負担を探し出し、演奏中の疲れや痛みを整えパフォーマンスアップを図ります。

できる限り、長い間演奏を楽しんでいただけるようにハルモニアは全力で音楽をされる方をサポートしていきます!

ご予約方法

 整体サロンHarmonia(ハルモニア)は完全予約制です。以下の予約フォーム、LINE、お電話のいずれかでご予約ください。

※オンラインでの楽器奏者のコンディショニング相談に関しては、予約フォームあるいはLINE予約よりご予約ください。
※予約フォームは予約は希望時間の1時間前までです。当日予約をご希望の方はお電話かLINEが確実です。

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