フルートを演奏した後に『首が痛い』『肩が痛い』『腕がだるい』などを感じたことはある方、いらっしゃるのではないでしょうか。
フルート演奏中の上半身と下半身の位置関係がねじれの関係にあると、肩・腕・手首・指が力みやすくなり演奏パフォーマンスが低下します。力みやすい肩や腰などは、痛みなどの故障につながります。
では、どうして上半身と下半身がねじれているとパフォーマンスが落ちたり、故障の原因になったりするのでしょうか。今回は、フルート演奏時に感じる肩こり・腰痛に関係する上半身と下半身の位置関係について解説します。
フルートを演奏する際の基本姿勢は、通常30°〜45°身体を開き、顔とフルートが正面に面している状態です。

このとき、上半身(体幹)と下半身(骨盤)は同一方向を向いています。わかりやすいように上からみたフルート演奏姿勢をイラストで表すと以下のような状態になります。

この状態だと、骨盤の上に体幹が位置しており、体幹にねじれのストレスも加わらないため、解剖学・運動学上、呼吸コントロールが行いやすい姿勢といえます。
なぜ、骨盤に対して体幹を回旋させてねじれの位置に姿勢を保持してしまうのか。考えられる原因として
が挙げられます。
フルートを吹く以外の時間の姿勢はどうなっていますか?肩こりが起きやすい猫背や腰痛が起きやすい反り腰・スウェイバック姿勢になっている人もいるのではないでしょうか。
姿勢の崩れがある状態だと、楽器を構えた際に使う筋肉が正常な姿勢のときと変わってきてしまいます。

フルートは空中で楽器を構え、呼吸を使って音を出す楽器であるため、上半身が自由に動く状態でなければなりません。猫背・反り腰・スウェイバック姿勢は、呼吸に関わる肋骨の動きが悪くなり硬くなってしまいます。胸郭が硬くなると楽器を構える際の肩甲骨周囲の筋肉が働きにくくなり、肩や上腕に掛かる負担が増えて痛みを伴うようになります。
また、ブレスコントロールが横隔膜・外腹斜筋・腹直筋上部といった上腹部に集中しやすくなるため上腹部も硬くなりやすく、下腹部に力が入りにくくなります。
骨盤に対して体幹を安定させて支えるためには、身体の芯を作る腹横筋が必要となります。腹横筋の筋力が弱くなると腹横筋の周りにある腹直筋・外腹斜筋といった身体の動きを作る大きな筋肉が過剰に働くようになります。
腹直筋・外腹斜筋が姿勢を支えるために働くようになると、体幹が回旋しやすくなり、呼吸コントロールが悪くなったり、腰痛が起こる原因となります。

フルートは口唇・左人差し指・右親指の3点で空中に保持して演奏します。楽器を空中で保持するためには肩甲骨を胸郭にしっかりと安定させるために僧帽筋・菱形筋群・前鋸筋の筋力が必要となります。


僧帽筋・菱形筋の筋力が弱いと巻き肩や猫背になりやすく、前鋸筋が弱いと楽器を空中で保持することが困難となります。猫背の場合は肩こりが起こりやすく、前鋸筋が弱いと楽器を身体に近づけるように構える傾向が強くなり、肩よりも肘が後ろに下がって右肩の後ろの棘下筋に痛みが出やすくなります。

さて、先程の正常の姿勢を踏まえて、骨盤に対して体幹がねじれる環境で演奏しているとどういった支障が起きるのでしょうか。

上のイラストはかなり大げさに体幹を左に回旋した状態ですが、ここまで行かなくても体幹を比較的正面に向けて首の左回旋を少なく演奏姿勢を保持している方はおられるのではないでしょうか。
確かに、体幹と首においてねじれの姿勢が作られないため、首の負担は最小限になりますが、体幹はねじれるようになります。すると右外腹斜筋・左内腹斜筋という側腹部にある腹筋が姿勢を支えるために過剰に働きやすくなり、ブレスコントロールに支障をきたすようになります。
また、このポジションをとる場合、フルートを正面に対して水平に保持しようとすると左腕をより胸に近づけるように楽器を保持するため左肩前面や胸の前が張りやすく、右腕においては右肩よりも右肘が身体の後ろに位置しやすくなるため、肩関節の後ろの張り・痛み、上腕の疲労感、手首のつまり感、指の動きにくさを感じやすくなります。


体幹に対して骨盤を左回旋させるようにボジションを取る方の場合、肩・腕・肘・手首・指への負担はすくなくなりますが、体幹を右回旋する力が自然と働いてしまうため、側腹部にある左外腹斜筋・右内腹斜筋の収縮が必要以上に起こり、ブレスコントロールに支障がきたすようになります。
また腰にある右広背筋・腰方形筋、肩甲骨を内転させる右菱形筋腹部の筋肉が硬くなるため腰痛や右肩甲骨の内側の痛みなどが起こる可能性があります。
実際のハルモニアを首の痛み・腰痛にてご利用いただいたフルート奏者さんの不調を感じていた当時の写真です。


体幹と骨盤の位置関係に着目してみてください。左脚を軸足にし、右足を後ろに引いて立ち、骨盤が比較的正面に向き、体幹を少し右回旋させています。右足を後ろに引き、腰を反ることで骨盤を右に開かない代償をしているため必要以上に右腰が反り、腰痛が起こりやすい状態となっています。
重心も左脚に載っていることで、スウェイバック姿勢の傾向になりやすく、体幹を安定させようとする力が上腹部と腰に集中してしまうため、インナーマッスルの働きも弱くなり、腰痛とロングトーンが短くなってしまうという不調につながっていました。(現在は首の不調・腰の不調を軽減されています)
さて、体幹と骨盤のねじれ、ご自身の演奏フォームではいかがでしょうか?実は自分が想像していた演奏姿勢とは違う場合が多くあります。
自分自身の演奏フォームを確認するためには、鏡で確認するだけだと前額面という正面向きの姿勢しか確認できません。前後方向の姿勢がどうなっているかを確認するためには、横向き(矢状面)の姿勢をスマホのカメラなどで撮影するのがおすすめです。

楽器演奏されている方は、ボディイメージを捉えるのがとても上手なため、客観的に自分の姿勢を捉えることで姿勢を修正することができる人も多いので自分の姿勢を客観的に見るのはとても重要です。
では、崩れた姿勢を整えるためには何をしていったらいいのでしょうか。
体幹と骨盤の位置関係にねじれが生まれると呼吸に影響があるため、ねじれないようにポジションを取ることが大事です。
基本姿勢の説明に乗せた写真やイラストを参考にしていただき、体幹と骨盤が同じ斜め30°〜45°開くポジションをとれると良いでしょう!
常に体幹と骨盤がねじれの関係にあると骨盤に対して体幹が右回旋しているときには左回旋への柔軟性が低下し、左回旋しているときは右回旋への柔軟性が低下していることが多いです。
胸郭を動かすようなストレッチを行うのがおすすめです。
参考として以前YouTubeにてライブ配信を行った「上半身のストレッチ」に関するアーカイブのリンクを掲載します。
胸郭や肩甲骨の動きを引き出すストレッチや簡単なトレーニングをご紹介していますのでぜひお試しください。
骨盤に対して体幹を回旋させて保持してしまう原因は、体幹を支える筋力バランスが崩れていることに由来します。
先に説明した腹横筋というインナーマッスルが弱くなり、アウターマッスルばかりをはたらかせて姿勢を制御しようとしてしまうことで体幹が回旋してしまうため、体幹を安定させるためのトレーニングを行ってインナーマッスルを働かせながらアウターマッスルを働かせていくことが重要になります。
その一つの方法としてバランスボールを活用したトレーニングを一つご紹介します。
このトレーニングは、急いでやる必要はありません。大切なのは、しっかりと下腹部に力が入り、体幹と骨盤がねじれずにマットに触れていながらできているかということです。
やり方がわかりにくいなどあればお気軽にコメント、お問い合わせください。
重心が前方へずれることで体幹を安定させるための力の働きが上腹部と腰に集中しやすいことをお伝えしました。そのため重心を前方でもなく後方でもなく骨盤と体幹が一直線に並ぶ安定した重心位置を保つ必要があります。
その目安が以下の写真・図のようなイメージです。


意外に思われる方もいるかもしれませんが、重心はつま先で支えるわけではありません。足の裏全体で体重を支え、重心は外くるぶしを結んだ線上の中央点に位置します。重心線上に体幹中心・骨盤中心が縦に並ぶようになるとスウェイバック姿勢などによる上腹部や腰への負担が最小限になり呼吸の妨げも少なく一番演奏パフォーマンスが発揮できる姿勢となります。
その人それぞれの骨格や演奏中にヒールを履いているか否かでも多少変わりますので、その時々で姿勢をチェックしてみましょう!
重心線よりも骨盤が前方へずれているようであれば少し後方へ移動させるように意識し、前のめり気味に体幹が前傾しているのであれば、足の裏全体に骨盤を乗せ、さらに骨盤の上に上半身を乗せに行くように意識してみるのも一つの方法です。
フルート演奏時の上半身(体幹)と下半身(骨盤)の関係性についてお話してきました。
姿勢の崩れが気になるけどどう対処したらいいのかわからないと思う方は、ハルモニアに一度ご相談ください。
あなたに合った姿勢の意識の方法やセルフケアの方法などをお伝えします。
また、本番が続いての疲労や楽器演奏中の抜けない不調など肩こりや腕の怠さ、腰痛など楽器演奏中の身体の不調を感じる方もハルモニアをご活用ください。演奏を長く続けるためのサポートをハルモニアは行っていきます。
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