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「解剖学×発声学!音楽家の身体ケア入門」zoomセミナー受講報告

音楽家の身体ケア入門セミナーに参加しました。

先日6月27日土曜日に開催されたPOST主催のzoomセミナー

「解剖学×発声学!音楽家の身体ケア入門」

を受講しましたので、アウトプットさせていただきます。

日本と海外とではアートとサイエンスの交わり方が異なる

以前、日本音楽家医学研究会に参加したブログ記事

の中で、海外にはアーティスティックパフォーミングアーツという分野に専門の医師や理学療法士、パーソナルトレーナー等がいると書かせていただきました。

日本では理学療法士に開業権が無いこと、まだまだ音楽に精通する医療職が少ないことがあげられますが、海外では一つのホールに一つのオーケストラ、そのオーケストラに1人専属の理学療法士がついているという国もあるようです。

演奏する技術を学ぶ場はたくさんあるが…

演奏する技術を学ぶ場は、音楽教室やカルチャースクール、大学などで学べる他、更に高みを目指す方にはマスタースクールという場もあるとのことでした。

ですが、

演奏するための”身体“を学ぶ場は無い

とのことでした。

アスリートの世界は身体のことを学び、競技に特化した身体の使い方を身につけていきます。そのため、身体の仕組みへの理解が深い人が多いのです。

しかし、音楽家の方は、身体のことを学ぶ機会は大学など高度に専門的に習う分野にいなければ少ない状態です。
音楽家の分野にも〇〇メソッドや〇〇テクニークなどの方法はありますが、局所的な使い方の方法が多いと講師の山本篤先生はおっしゃっていました。

「このメソッドが良かった!」
「このやり方良かった!」

と妄信的な考え方になると、その人にとって他のメソッドのほうがより効率的なのに理解を示せなかったり、様々なメソッドに触れる機会が減ってしまうことが挙げられ、また、「良かった!」と思ったメソッドを用いてもうまく表現できなくなったときに、問題解決ができず、袋小路になってしまうとのことでした。

今の自分に必要なメソッドは何であるのかは、音楽家自身に決めていただく必要があります。

「お腹の風船を膨らませるように」
「頭の先から音を出すように」

など、イメージ先行での指導や方法が多くある中、覚えたメソッドの『本当の意味』を解剖学的に捉え、身体の使い方を解説してあげる立場として、理学療法士の知識を生かしてお手伝いしてあげることが可能であるとのことでした。

自分自身の体にあった方法を最短距離で選べる知識を解剖学・運動学に基づいてアドバイスすることが理学療法士の知識を持っていれば可能であるとのことでした。

自分の演奏を客観的に捉えることの重要性

音楽家の身体の使い方は感覚的に捉えており、客観的な捉え方をしている人は少ないとのことでした。客観的に捉えた動作をわかりやすく、主観的に捉えやすい情報として置き換えて伝えることで、負担の少ない演奏方法を理解してもらうことができるとのことでした。

「悪化してからではなく、悪化する前に予防することができる」と音楽家寿命が伸び、より長い間音楽家として活躍できる時間が伸びる、こういったことに我々理学療法士の資格を持った者は寄与できるというお話があり、まさにそのとおりだと感じました。

「練習後に手首がシクシクする」
「腕が張って重たくなる」
「肘が伸びにくい」

といった「ちょっとした問題」を、大きな問題になるきっかけなんだ」「早めに対策すれば予防できるという認識をもってもらうことが重要なのです。
これは音楽家だけでなく、デスクワーカーや主婦の方も同じです。早め早めから予防するという認識が必要なのです。

悪化してからでは、音楽家はパフォーマンスを落とさずに演奏することは難しいですし、最悪の場合、音楽を諦めなければいけなくなります。

外国の方は、50歳、60歳で円熟した声楽家の方が多くいらっしゃいますが、日本はイメージによる練習が多く、練習時点で声や身体を酷使する方が多いので30歳、40歳と音楽家寿命が短い傾向にあるとのことでした。
感覚的な練習にて効率よく練習ができていない音楽家の方たちが、練習を無理し続け、音楽家寿命を縮めていることが多いとのお話があり、ますます、自分の今の活動の重要性を実感したところです。

今まで私が対応したお客様にも、このまま続けていたら楽器演奏続けることが大変になるだろうと感じる方もいらっしゃいました。

ちなみに腱鞘炎は、起こるべくして起きています。
少し休めば普段は痛くないという方も、休まなければ痛みが出てしまうという考え方を持って貰う必要があります。

ただでさえ、日本人は我慢をする人種です。痛みに耐えきれなくなってから病院に受診し、診察してもらったときには手術しか無い、手術もできないといった問題に直面するといった方々に病院やクリニック勤務中たくさん出会いました。

痛みや強張り、動きにくさというのは早めに対処しておいて損はないのです。

動作分析は、楽器演奏中の演奏運動®と相性がいい

理学療法士の技術の一つとして動作分析というものがありますが、これは、演奏の時間軸の中でのあるポイントの問題を抽出するという点で相性がいいとのことでした。

そして、一般的な疾病の基礎知識を有する理学療法士は、演奏から起こりうる疾病の可能性を予測し、予防や問題解決へ導くことができる、医学的根拠に基づく対応や学びの提供が可能であるとのことでした。

関節について、筋肉について、血管について、神経について、筋膜について、それぞれを勉強し、動作の中に落とし込んで、掛かる負担を予測する、わたしも動作分析の能力で音楽家の方に寄与できるものがあるのではないかと思ったので、今回Harmoniaを開業した際に、音楽に携わる方へのコンディショニングをかかげました。

さまざまな業種の方との連携の必要性

音楽家に理学療法士だけが関わるだけでは解決できないことがあるため、医学系のネットワークが必要であるとのことでした。

  • 歯科であれば、アンブシュアの問題や、発声における歯並びについて
  • 耳鼻咽喉科であれば、発声器官について
  • 言語聴覚士も発声器官について
  • 整形外科であれば、演奏姿勢の問題について
  • 脳神経外科であれば、フォーカルジストニアや認知機能について
  • 作業療法士であれば、楽器を扱うためのデバイスについて
  • 精神科であれば、心理的負担について
  • 管理栄養士であれば、体調管理のための栄養知識について

と各専門分野の方々の協力、支え合ってこそ、音楽家のハイパフォーマンスにつながる活動ができるとのことでした。

ここに関しては、当店の課題でもあります。
医師とのつながりや音楽に精通する他のリハ職の人たちとの連携はまだ構築できていないのが現状ですので、少しずつ構築できるようにしていきたいと思っています。

声楽家の実例を通して

セミナーの後半は、実際に、ゴスペルをやられている声楽家の方をゲストとしてお呼びし、姿勢分析や発声時のボリュームや強弱のしやすさの変化などをアドバイスによって整え、最初の発声よりも音の強弱やコントロールがしっかりと変化が出るように誘導されているのをみて、納得することが多くありました。

発声姿勢に関しても、慢性痛を伴う方と同様に体幹のコントロールや肩甲骨のポジション、骨盤の前後傾などを声楽家の方に自覚してもらいながら調整していくことで、パフォーマンスを挙げていく。

おそらく、自覚してもらえるような口頭支持をする、アドバイスをするという点が人によって理解しやすさが異なるので引き出しをたくさん持っていたほうがいいのだろうなと感じるところでした。

発声などがうまくできるようになったときのゲストの声楽家の方の笑顔は印象的でした。

まとめ

今回は、参加したzoomセミナーについて私なりに感じたことを含めてまとめてみました。
少しずつでも音楽家の方に身体のことを知っていただき、感覚的・イメージ的な指導による演奏の追求ではなく、解剖学や運動学に基づいた身体の使い方の工夫からパフォーマンスアップができるように、頑張ります!

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