ピアノを演奏している方に起こる親指の痛み。中でも母指CM関節症は、親指のつけになる軟骨がすり減り、痛みや変形が起きる疾患です。
「親指で打鍵するたびに痛い」「オクターブ指が届かなくなった」など、演奏中のパフォーマンスを落とす大きな要因になります。
では、どうして母指CM関節症は、更年期以降の女性に多いため、ホルモンバランスの影響を指摘される方が少なくありません。
なぜ母指CM関節症が起きるのか、その原因を一般の方やピアノを弾く方に向けて分かりやすく解説します。
親指の付け根の関節(MP関節)から更に手首の近くにある関節をCM関節(第一手根中手関節)と呼びます。
親指は、人差し指や小指など他の4本の指と「向かい合う」ように動くことで、物を「つまむ」「握る」といった複雑な動作を可能にしています。
手全体の機能の約40%は、この親指の動きが担っていると言われるほど重要な関節です。

関節が痛むようになるまでには、いくつかのステップがあります。
母指CM関節は「馬のサドル(鞍)」のような独特な形をしており、鞍関節と呼ばれます。
2軸性の関節であり、親指はぐるぐると自由に大きく回すことができます。
反面、「グラグラしやすく不安定」ということでもあります。関節を支える靭帯(骨と骨をつなぐ頑丈なゴムのような組織)や筋肉に負担がかかりやすい構造になっているのです。

② クッション(軟骨)のすり減り
母指CM関節の骨の表面は、滑らかで弾力のある「軟骨」というクッションで覆われています。 しかし、長年の使用や繰り返される強い力によって、このクッションが徐々にすり減っていきます。
クッションが薄くなると、骨同士が直接こすれ合うようになり、これが関節の炎症や強い痛み、そして骨の変形を引き起こします。
一般の人に比べて、ピアニストはこの親指の付け根に非常に大きな負担をかけ続けています。
- 鍵盤を親指で打鍵する動作
親指で打鍵するときの動きの中心は、母指CM関節であるため親指の筋肉の柔軟性が低下していると、動くたびに負担がかかり痛みにつながります。 - 「指くぐり」などのピアノ特有の動き
親指を手のひらの下に滑り込ませて弾く「指くぐり」や、親指を横に寝かせた状態で鍵盤を強く叩く動作は、本来の骨の動きとは異なる方向から無理なねじれの負荷をかけることになります。また母指内転筋や短母指屈筋といったCM関節に負担をかける筋肉がオーバーワークを起こしやすく硬くなることで痛みを引き起こします。 - 手を限界まで広げる動作(オクターブや和音)
鍵盤で広い音程を弾く際、親指で打鍵した状態で、手を横に大きく開き、遠くの鍵盤を押し下げます。このとき、親指を橈側外転(横方向に広げ)させて親指で打鍵できればCM関節への負担は最小限になります。しかし、母指CM関節症になる方の場合、親指で真下に鍵盤を押す力(掌側外転)とかけており、母指球筋を収縮させて状態で引き延ばす負担がかかるため、CM関節に強い圧迫の力を同時に与え、靭帯や関節を痛める大きな原因になります。
何気なくピアノを演奏している中で起こりやすいこれらの動作が、母指CM関節症を生じる要因になっているのです。
手の使いすぎだけでなく、体質的な要因も重なることで発症しやすくなります。
- 加齢と靭帯の緩み
年齢を重ねると、関節を支える靭帯が少しずつ硬くなり、関節が圧迫されることで軟骨がさらにすり減りやすくなります。 - 女性に多い
40代以上の女性、特に閉経後の女性に多く見られます(女性全体の4人に1人から3人に1人が罹患しているとも言われます)。これは女性ホルモンの減少が、靭帯のしなやかさや軟骨の質に影響を与えるためと考えられています。
これらの他にも、筋肉量が少なかったり、栄養バランスが悪いことでも母指球筋の疲労が回復しにくくなり、硬くなっていくことで母指CM関節への負担が増え、痛みを感じるようになります。
母指CM関節において、曲がっていると関節が不安定な状態であり、筋肉が硬くなったりすると関節負担が増えます。
そのため、いかに母指CM関節を伸ばしたまま運指をするかがとても大事になります。Youtubeにて使い方について親指の使い方について解説をしていますので、ぜひ一度ご覧ください。
母指CM関節への負担は、手指の局所的な問題だけではなく、胸郭・肩甲骨・肩関節・肘関節・前腕・手関節(手首)へとつながる運動連鎖が大きく関わります。
例えば、長時間のデスクワークや不適切な姿勢習慣によって「猫背」や「巻き肩」が定着すると、肩甲骨は外転・前傾位で固定され、肩関節の内旋を引き起こします。
ピアノを演奏するために鍵盤に手を乗せる際、肩関節を常に外旋させる姿勢となり、前腕や手首を小指側に倒す筋肉の力みが起こりやすく、母指CM関節も曲げる筋肉が力むことにつながるため痛みを引き起こします。

身体の使い方や姿勢を変えようと努力しても変えられない場合、それらを使うために必要な関節の可動域と筋力がないことが考えられます。
母指CM関節症の場合、母指CM関節の外転・伸展の可動域、肩関節屈曲の可動域、肘関節伸展の可動域、前腕回外の可動域、手関節橈屈の可動域が確保されているかがかなり大事になります。
また、母指外転筋・大胸筋・僧帽筋・前鋸筋・橈側手根屈筋・橈側手根伸筋の筋力が必要であり、母指球筋群・腕橈骨筋・尺側手根屈筋・尺側手根伸筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋・烏口腕筋・小胸筋・鎖骨下筋といった筋肉の柔軟性も重要です。
母指CM関節症と診断されて、「痛み止めの薬・湿布の処方」だけであったり、「サポーターで様子を見ましょう」「関節に負担をかけないように安静にしてください」だけではなんの解決にもなりません。
そのまま演奏続ければ痛みも増し、関節の摩耗はどんどん進みます。セルフケアでどうにかしようとするには、限界があるので、ピアノの指の使い方を考慮しながら、身体の使い方を見直してもらえる身体の専門家に相談してみましょう。
整体サロンHarmoniaでは、母指CM関節症に対して以下のようにアプローチしていきます。
- ピアノ演奏中の様子を伺い、運指中の親指の動きを細かく分析します。
- 母指CM関節症で痛みを引き起こしやすい筋肉の柔軟性を引き出し、うまく使えていない筋肉を刺激するトレーニングを行います。
- ピアノ演奏中に負担となりやすい指の動きを見直すボディワークを行います。

ハルモニアは、痛みの症状を整えるだけではありません。痛みを再発させないための運指の方法についてもご提案していきます。
痛みを限りなく少なく、楽しく演奏を続けられる体作りをサポートしています。
ピアノ演奏される方に多い「母指CM関節症」について解説しました。母指CM関節症と診断されて「安静と使いすぎないこと」を医師から言われてしまっても、まだできることがあります。
正直、セルフケアでは限界がありますので、指の動きをしっかりとみてもらえる専門家の相談することが賢明です。
楽器を演奏できなくなると精神的にも辛くなってしまう方は非常に多いです。一人で抱え込まず、ぜひ一度整体サロンHarmoniaへご相談ください。
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