「練習後に首が回らないほど痛い」「長時間吹くと、決まって右腰が重くなる」「指が思うように回らず、腕がパンパンになる」
もしあなたがこのような不調を感じているなら、それは練習不足ではなく、「上半身(体幹)」と「下半身(骨盤)」のねじれが原因である可能性が高いです。
一見、関係なさそうに見える「足の構え方」や「骨盤の向き」。しかし、これらが解剖学的・運動学的に不自然な位置にあると、どれだけ練習しても身体を痛める一方です。
本記事では、多くのプロ奏者のコンディショニングを行ってきたハルモニアが、フルート演奏時の「ねじれ」を解消し、本来のパフォーマンスを取り戻すための方法を解説します。
フルートを構える際、身体を30°〜45°開くのが一般的ですが、重要なのは角度そのものではなく、「上下のつながり」です。
| チェック項目 | 理想的な姿勢 | 負担のかかる姿勢 |
|---|---|---|
| 顔の向き | 譜面台に対して向き合う | 譜面台を覗き込むように頭を突き出す |
| 骨盤と体幹 | どちらも譜面台に対して30〜45度右へ開く | 骨盤だけ右へ開き、体幹が譜面台に向いている |
| 重心位置 | 流動的に前後左右にゆれてOK、静止時は両足の中間 | ずっと左右どちらかの脚だけに偏る |
| 呼吸の状態 | 背筋を伸ばしたまま息が吐ける | 過度にお腹を膨らませている。息を吐くときに上腹部を丸めてしまう。 |

理想的な姿勢が保てると骨盤の上に体幹が位置しており、体幹にねじれのストレスも加わらないので左右どちらかの脇腹の筋肉や腰の筋肉が過活動を起こしにくくなります。
解剖学・運動学上、上半身を支える腹筋や腰にある筋肉がアンバランスに働くことがないため呼吸が行いやすい姿勢です。

無意識のうちに「ねじれ姿勢」をとってしまうのには、明確な身体的理由があります。
「右足重心」または「左足重心」のまま長時間演奏していませんか? 片脚に重心を預けつづけると、バランスを取るためにアンバランスな姿勢制御をしようとします。
例えばイラストのように、左足の親指の付け根重心で演奏を続けているとします。

すると、左半身で姿勢を支えようとする力みが生まれ、バランスをとるために骨盤より体幹が左回旋して正面を向くようになり、腰が反りやすくなります。
結果、左の脇腹の筋肉や股関節周囲の筋肉、右腰の筋肉が力みやすくなり、腹圧をコントロールする腹横筋も上手く使えなくなるため、腰痛や肩こり、呼吸コントロール不良などの要因となります。

姿勢を支える天然のコルセットである「腹横筋(ふくおうきん)」が弱いと、身体はアウターマッスル(腹直筋や外腹斜筋など)を使って無理やり姿勢をコントロールしようとします。
これが「力み」の正体であり、意図しないねじれを生む原因です。

フルートを空中で保持するためには肩甲骨を胸郭にしっかりと安定させることが重要です。
- 僧帽筋・菱形筋群:肩甲骨が外に広がりすぎるのをコントロールする
- 前鋸筋:腕を前上方へ押し出す力を生み出し、楽器を支える力を生む


これらの筋肉が弱いと、猫背や巻き肩が起こりやすく、肩甲骨が不安定になります。すると楽器を身体に近づけるように構える傾向が強くなり、肩よりも肘が後ろに下がって右肩の後ろ側や背中の痛みにつながります。
上半身と骨盤のねじれがあるなかで「なんとなく吹きにくい」を放置すると、以下のような具体的なトラブルにつながります。
フルート姿勢で、骨盤だけが右へ開き、上半身が正面へ向けてフルートを構えるパターンがあります。
首の負担は減りますが、脇腹の筋肉・腰の筋肉が必要以上に働きます。

脇腹の筋肉の張りは、息を吸うときの腹部のコントロールに影響し、腰の筋肉の張りは、腰痛につながります。
腕に関しても過剰に働く部分があります。
左腕は、楽器を胸に近づけて支えるため、左胸の前が張ったり左脇が開きやすくなって左手首・指の力みにつながります。
右腕は、右肩よりも右肘が身体の後ろに位置しやすくなるため、肩関節の後ろの張り・痛み、上腕の疲労感、手首のつまり感、指の動きにくさを感じやすくなります。

一見、上半身と腕のポジションだけ見れば基本姿勢にみえますが、腰への負担が増大します。
体幹を右回旋する力が自然と働いてしまうため、側腹部にある左外腹斜筋・右内腹斜筋が過剰に働き、ブレスコントロールに支障がきたすようになります。

また腰にある右広背筋・腰方形筋、肩甲骨を内転させる右菱形筋腹部の筋肉が硬くなるため腰痛や右肩甲骨の内側の痛みなどが起こる可能性があります。
実際の事例
左足を軸にして腰を反り、無理に体幹を右に回していた方。「ロングトーンが続かない」「腰が痛い」「首が痛い」というお悩みがありました。
重心位置とねじれを修正するストレッチやエクササイズ、ボディワークを行うことで不調の緩和と演奏の持久力アップを実現されました。
※効果には個人差があります。

不調を感じる方の場合、自分の姿勢の主観(感覚)と客観(見た目)で大きくズレていることがほとんどです。まずは、客観的に自分の姿勢を捉えることが大切です。
鏡(正面)だけでなく、「真横」から撮影してください。 「思ったより反り腰になっている」「猫背になっている」など、ねじれや前後のズレに気づくことからスタートです。
楽器演奏している方は、ボディイメージを捉えるのがとても上手なため、客観的に自分の姿勢を捉えることで姿勢を修正することができる人も多いので自分の姿勢を客観的に見るのはとても重要です。

演奏において、頭ー首ー胸ー腰ー脚が一直線に並ぶ安定した姿勢を保つことが、良いパフォーマンスを発揮する上でも大切ですが、重心位置をコントロールにおいても同じことが言えます。
左つま先重心・右つま先重心で立つ人も中にはいるかも知れませんが、どちらの場合もずっと同じ姿勢が続くと腰が反りすぎたり、膝に負担になったり、肩が丸まってしまったりと何かしらの代償動作が起こります。

まっすぐ立つときにまず、肩幅に足を広げ、左足を前あるいは右足を後ろに引き、つま先をハの字にして開くことで土台としての安定性を確保できるようになります。
このとき「外くるぶしを結んだ線の中点あるいは中点よりやや左」くらいが楽器を構えたときの重心の延長線になります。

この一直線に並ぶ姿勢が保てる状態から同じところに重心を保つことが、外見的にもきれいに見えるため推奨させれる人もいますが、現在では、奏法の観点から前後左右への重心移動は必要に応じて使うという指導もあるようです。
ねじれた姿勢が定着していると、胸郭が硬くなり、正しい姿勢に戻せなくなっています。まずはストレッチでリセットしましょう。
▼ 楽器奏者のための胸郭・肩甲骨ストレッチ(動画)▼
こちらの動画で紹介しているエクササイズは、演奏前のウォーミングアップにも最適です。
重心位置の調整や上半身の柔軟性確保ができているのに上半身をねじって姿勢を取ってしまう場合は、体幹回旋に関わる腹筋群の筋力バランスを整える必要があります。しかし人それぞれで筋力バランスの崩れが異なるため個別に合わせたトレーニングを行うひつようがあります。
フルート演奏の姿勢を踏まえてトレーニングを提案してもらえる理学療法士などの専門家に相談しましょう。
フルート演奏における肩こりや腰痛は、「練習の勲章」ではありません。「効率の悪い身体の使い方をしていますよ」という身体からの警告です。
- 上半身と下半身は「ねじれ」ていませんか?
- 重心は左右どちらかに偏っていませんか?
これらを見直すだけで、音の響きや指の回り方が驚くほど変わる可能性があります。
「自分の姿勢が合っているかわからない」 「長年の痛みをなんとかして、長く演奏を楽しみたい」
そうお考えの方は、楽器奏者の身体を知り尽くした整体サロン「Harmonia(ハルモニア)」にご相談ください。
理学療法士の資格を持つスタッフが、あなたの演奏姿勢を分析し、痛みが出にくい身体作りとパフォーマンスアップをサポートします。
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