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【フルートの肩こり・腰痛】原因は「ねじれ」?解剖学に基づく正しい姿勢と3つの改善策

フルートの演奏姿勢です。

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 「練習後に首が回らないほど痛い」「長時間吹くと、決まって右腰が重くなる」「指が思うように回らず、腕がパンパンになる」

もしあなたがこのような不調を感じているなら、それは練習不足ではなく、「上半身(体幹)」と「下半身(骨盤)」のねじれが原因である可能性が高いです。

一見、関係なさそうに見える「足の構え方」や「骨盤の向き」。しかし、これらが解剖学的・運動学的に不自然な位置にあると、どれだけ練習しても身体を痛める一方です。

本記事では、多くのプロ奏者のコンディショニングを行ってきたハルモニアが、フルート演奏時の「ねじれ」を解消し、本来のパフォーマンスを取り戻すための方法を解説します。

フルート演奏時の「理想的な基本姿勢」とは?

 フルートを構える際、身体を30°〜45°開くのが一般的ですが、重要なのは角度そのものではなく、「上下のつながり」です。

チェック項目理想的な姿勢負担のかかる姿勢
顔の向き譜面台に対して向き合う譜面台を覗き込むように頭を突き出す
骨盤と体幹どちらも譜面台に対して30〜45度右へ開く骨盤だけ右へ開き、体幹が譜面台に向いている
重心位置流動的に前後左右にゆれてOK、静止時は両足の中間ずっと左右どちらかの脚だけに偏る
呼吸の状態背筋を伸ばしたまま息が吐ける過度にお腹を膨らませている。息を吐くときに上腹部を丸めてしまう。
フルートの立奏での基本姿勢です。

理想的な姿勢が保てると骨盤の上に体幹が位置しており、体幹にねじれのストレスも加わらないので左右どちらかの脇腹の筋肉や腰の筋肉が過活動を起こしにくくなります。

解剖学・運動学上、上半身を支える腹筋や腰にある筋肉がアンバランスに働くことがないため呼吸が行いやすい姿勢です。

フルートの基本姿勢の水平面のイラストです。
紺色楕円:骨盤 肌色楕円:上半身

なぜ上半身と骨盤が「ねじれ」てしまうのか?3つの主な原因

 無意識のうちに「ねじれ姿勢」をとってしまうのには、明確な身体的理由があります。

片脚重心での演奏姿勢になっている

 「右足重心」または「左足重心」のまま長時間演奏していませんか? 片脚に重心を預けつづけると、バランスを取るためにアンバランスな姿勢制御をしようとします。

例えばイラストのように、左足の親指の付け根重心で演奏を続けているとします。

左前方重心にてフルート姿勢を保持する方の重心位置の目安です。

すると、左半身で姿勢を支えようとする力みが生まれ、バランスをとるために骨盤より体幹が左回旋して正面を向くようになり、腰が反りやすくなります。

結果、左の脇腹の筋肉や股関節周囲の筋肉、右腰の筋肉が力みやすくなり、腹圧をコントロールする腹横筋も上手く使えなくなるため、腰痛や肩こり、呼吸コントロール不良などの要因となります。

骨盤に対して上半身が左により回旋した状態でのフルート演奏姿勢です
骨盤に対して上半身を左回旋するイメージ図

体幹のインナーマッスルの機能低下

 姿勢を支える天然のコルセットである「腹横筋(ふくおうきん)」が弱いと、身体はアウターマッスル(腹直筋や外腹斜筋など)を使って無理やり姿勢をコントロールしようとします。

これが「力み」の正体であり、意図しないねじれを生む原因です。

産後に強化したい筋肉の一つ「腹横筋」。天然コルセットの役割があり上半身を支える大事な役割を持っているが妊娠で伸ばされてしまう。楽器演奏においても腹横筋は重要で、腹圧をコントロールするため姿勢制御や呼吸コントロールにとても重要です。

楽器を支える腕(上肢帯)の筋力不足

 フルートを空中で保持するためには肩甲骨を胸郭にしっかりと安定させることが重要です。

  • 僧帽筋・菱形筋群:肩甲骨が外に広がりすぎるのをコントロールする
  • 前鋸筋:腕を前上方へ押し出す力を生み出し、楽器を支える力を生む
肩甲骨を背中の中央に寄せる働きを持つ筋肉が載ったイラストです。僧帽筋・大菱形筋・小菱形筋・肩甲挙筋を載せています。
肩こりに影響する肩甲骨の安定性を司る前鋸筋のイラストです。前鋸筋上部は、肩甲骨を前傾させる作用があり、前鋸筋下部はバンザイ動作など腕を挙上するときに肩甲骨の動き作る役割があります。

これらの筋肉が弱いと、猫背や巻き肩が起こりやすく、肩甲骨が不安定になります。すると楽器を身体に近づけるように構える傾向が強くなり、肩よりも肘が後ろに下がって右肩の後ろ側や背中の痛みにつながります。

「ねじれ」が引き起こす演奏への悪影響

 上半身と骨盤のねじれがあるなかで「なんとなく吹きにくい」を放置すると、以下のような具体的なトラブルにつながります。

骨盤に対して体幹を左回旋してしまう場合

 フルート姿勢で、骨盤だけが右へ開き、上半身が正面へ向けてフルートを構えるパターンがあります。

首の負担は減りますが、脇腹の筋肉・腰の筋肉が必要以上に働きます。

骨盤に対して上半身が左により回旋した状態でのフルート演奏姿勢です
骨盤に対して体幹を左回旋している

脇腹の筋肉の張りは、息を吸うときの腹部のコントロールに影響し、腰の筋肉の張りは、腰痛につながります。

腕に関しても過剰に働く部分があります。

左腕は、楽器を胸に近づけて支えるため、左胸の前が張ったり左脇が開きやすくなって左手首・指の力みにつながります。

右腕は、右肩よりも右肘が身体の後ろに位置しやすくなるため、肩関節の後ろの張り・痛み、上腕の疲労感、手首のつまり感、指の動きにくさを感じやすくなります。

体幹が骨盤よりも左回旋した状態のフルート演奏姿勢で痛みが起こる部位を表したイラストです。右肩後ろ・右上腕・右肘、左胸に張りや痛みを伴う事が多いです。
体幹が左回旋していることで痛みの出やすい場所

骨盤だけ正面に残し、体幹を右へねじっている場合

一見、上半身と腕のポジションだけ見れば基本姿勢にみえますが、腰への負担が増大します。

体幹を右回旋する力が自然と働いてしまうため、側腹部にある左外腹斜筋・右内腹斜筋が過剰に働き、ブレスコントロールに支障がきたすようになります。

骨盤を正面に向け体幹を右回旋した状態で演奏姿勢を保っているイラストです。
骨盤は正面向き、体幹だけ右回旋している姿勢

また腰にある右広背筋・腰方形筋、肩甲骨を内転させる右菱形筋腹部の筋肉が硬くなるため腰痛や右肩甲骨の内側の痛みなどが起こる可能性があります。

実際の事例

 左足を軸にして腰を反り、無理に体幹を右に回していた方。「ロングトーンが続かない」「腰が痛い」「首が痛い」というお悩みがありました。

重心位置とねじれを修正するストレッチやエクササイズ、ボディワークを行うことで不調の緩和と演奏の持久力アップを実現されました。

※効果には個人差があります。

フルート奏者で骨盤が正面を向き、体幹を右回旋させた演奏姿勢を保っている写真です。
骨盤が正面体幹を右回旋している姿勢

今日からできる!姿勢の修正とセルフケア

 不調を感じる方の場合、自分の姿勢の主観(感覚)と客観(見た目)で大きくズレていることがほとんどです。まずは、客観的に自分の姿勢を捉えることが大切です。

STEP1:自分の姿勢をスマホなどで真横から撮影する

 鏡(正面)だけでなく、「真横」から撮影してください。 「思ったより反り腰になっている」「猫背になっている」など、ねじれや前後のズレに気づくことからスタートです。

楽器演奏している方は、ボディイメージを捉えるのがとても上手なため、客観的に自分の姿勢を捉えることで姿勢を修正することができる人も多いので自分の姿勢を客観的に見るのはとても重要です。

姿勢評価を行っている写真です。客観的に自分の姿勢を知ることで自分の不調がどんなことから起きているのか知ることができます。

STEP2:重心位置を調整する

 演奏において、頭ー首ー胸ー腰ー脚が一直線に並ぶ安定した姿勢を保つことが、良いパフォーマンスを発揮する上でも大切ですが、重心位置をコントロールにおいても同じことが言えます。

左つま先重心・右つま先重心で立つ人も中にはいるかも知れませんが、どちらの場合もずっと同じ姿勢が続くと腰が反りすぎたり、膝に負担になったり、肩が丸まってしまったりと何かしらの代償動作が起こります。

フルート演奏時の重心位置のイメージです。両肩を結んだ線の中心・上半身の中心・骨盤の中心・両外踝を結んだ線の中心が一直線に並んでいるのが理想です。
体に負担のかからない重心線の目安

まっすぐ立つときにまず、肩幅に足を広げ、左足を前あるいは右足を後ろに引き、つま先をハの字にして開くことで土台としての安定性を確保できるようになります。

このとき「外くるぶしを結んだ線の中点あるいは中点よりやや左」くらいが楽器を構えたときの重心の延長線になります。

フルート演奏時の理想的な重心位置のとり方を示したイラストです。両外踝を結んだ線上で且つ、その線の中央点に重心が位置していると一番安定しているといえます。
本来あるべき重心位置の目安

この一直線に並ぶ姿勢が保てる状態から同じところに重心を保つことが、外見的にもきれいに見えるため推奨させれる人もいますが、現在では、奏法の観点から前後左右への重心移動は必要に応じて使うという指導もあるようです。

STEP3:胸郭の柔軟性を取り戻す

 ねじれた姿勢が定着していると、胸郭が硬くなり、正しい姿勢に戻せなくなっています。まずはストレッチでリセットしましょう。

▼ 楽器奏者のための胸郭・肩甲骨ストレッチ(動画)
こちらの動画で紹介しているエクササイズは、演奏前のウォーミングアップにも最適です。

身体の筋肉の左右バランスを整える

 重心位置の調整や上半身の柔軟性確保ができているのに上半身をねじって姿勢を取ってしまう場合は、体幹回旋に関わる腹筋群の筋力バランスを整える必要があります。しかし人それぞれで筋力バランスの崩れが異なるため個別に合わせたトレーニングを行うひつようがあります。

フルート演奏の姿勢を踏まえてトレーニングを提案してもらえる理学療法士などの専門家に相談しましょう。

まとめ:痛みは「身体からのサイン」です

 フルート演奏における肩こりや腰痛は、「練習の勲章」ではありません。「効率の悪い身体の使い方をしていますよ」という身体からの警告です。

  • 上半身と下半身は「ねじれ」ていませんか?
  • 重心は左右どちらかに偏っていませんか?

これらを見直すだけで、音の響きや指の回り方が驚くほど変わる可能性があります。

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整体サロンHarmoniaをご利用いただいているフルート奏者の方の反り腰に対する施術の左側before、右側afterの写真です。つま先重心の立ち方から重心が後ろへ移動し、骨盤前傾も少なくなり反り腰が緩和しています。
フルート奏者の姿勢改善例

▼楽器奏者のコンディショニングの詳細▼

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