ピアノや弦楽器など、指や手首を使う楽器において、手のしびれや痛みの原因となる「手根管症候群」。一般的には中年女性に多い疾患ですが、楽器奏者にもみられる症状の一つです。
発症のきっかけの多くは、演奏に伴う指の筋肉のオーバーワークが主な原因です。
手根管症候群は、何らかの原因により手根管内を通る正中神経が圧迫されることによって、手のしびれや痛みが起こる症状です。
概要については、以下のリンクをご参照ください。
【手のしびれ・痛み】手根管症候群の原因と対策を解説!楽器演奏者に手根管症候群が起こるのには何が要因としてあるのでしょうか。
ピアノを打鍵したり、ギターの弦を弾いたり、フルートのキィ操作をしたり、楽器演奏は指の動きの繰り返します。
指を動かす筋肉は、主に前腕にあり、浅指屈筋・深指屈筋・長母指屈筋の腱が手根管の中を腱鞘に包まれて通っています。
長時間にわたって指を動かすことで、腱鞘のなかで腱がこすれて炎症を起こし、手根管内が腫れてしまうことで圧力が高まり正中神経を圧迫することにつながります。
楽器演奏において多くみられる母指球筋のオーバーワークも手根管症候群に関係しています。
ピアノの親指での打鍵、フルート・クラリネット・サックスでの親指で支える構え、バイオリン・ヴィオラ・チェロで弓を持つなど、楽器演奏中は親指の筋肉を使う機会が多いです。
親指を動かす母指球筋は、手根管の腱をおさえる屈筋支帯(横手根靭帯)につながっています。
そのため、母指球筋が疲労して硬くなると、知らず知らずのうちに屈筋支帯の粘弾性が低下していきます。
それに伴い、手根骨の位置も楕円に囲むような状態から円状に偏位するのです。
指のオーバーワークに関連しますが、楽器演奏では練習・本番に限らず指・手首・腕をたくさん使います。
本番では、緊張など精神的な負担もあるため全身の疲労を感じやすいですが、練習では疲れを感じにくいことも多いです。
そのため、肩や腕に張りや違和感を感じていても、休めば治るとアフターケアをする人が少ない傾向にあります。
しかし、手根管を通る腱鞘に必要以上の負担がかかるため炎症やむくみにつながる可能性があります。
楽器を演奏する際の姿勢は、日常生活とは異なるイレギュラーな姿勢であり、上半身と肩甲骨から指先は、各楽器に特化した使い方になります。
- バイオリン奏者の左手から腕の姿勢と弓をもつ右手の動き
- フルートの左右非対称な構え方と楽器の支え方に伴う親指と手首の位置
- ギターでの弦を抑える左手・手首の使い方
- ピアノの指の繰り返しの動きと手首の位置・使い方 など
演奏環境や演奏家の筋力によって関節の可動域の限界位置で楽器を支えたり操作することにつながる場合があります。
関節の可動域限界は、筋肉に過剰な負担を生みやすく、疲労も起こりやすくなります。
これにより、手根管を通る筋肉にも負担が生じることで手根管内の圧力が上昇し、神経への負担が増加します。
多くの楽器奏者は、長時間の練習を行うことが多いかと思います。集中すると5時間〜6時間連続で行うとの話もお聞きします。
スポーツと同じように、特定の動きが長時間行われることで指の動きに関わる筋肉に疲労が蓄積します。
これにより、手根管部への負担が増えて起こりやすいと考えられます。
楽器奏者の方で手根管症候群などの症状に悩む方に多いのが、指のこわばりや手首の痛みを感じたことで痛みを避ける奏法を独自に見つけ出して演奏を続けることです。
先ほども述べたように、楽器演奏自体が人間本来の効率の良い身体の使い方とはイレギュラーな動作が多いです。
基本に忠実な動きをしていても演奏環境や疲労の具合で負担は蓄積します。
人の関節の構造や関節の動きをよく理解し、負担が和らぐ奏法を見いだせればよいですが、体の構造を理解して演奏している演奏家は一握りです。
ほとんどの場合、今まで酷使していなかった筋肉だけを使うような効率の悪い演奏姿勢へと移り変わり、知らず知らずのうち力みやすく不調を感じやすくなります。
手がしびれる・指がこわばるなど手根管症候群の症状がみられるようになったときに、どんな対策があるでしょうか。
しびれを感じたら、まずは整形外科に受診し、手根管症候群なのかレントゲンや超音波検査を含めしっかり診断してもらいましょう。
可能なら、理学療法士や作業療法士による指・手首などのリハビリテーションが受けられると良いでしょう。
しびれ軽減の薬やビタミン剤、電気療法などの対処療法が治療の中心になる場合は、施術を受けられる専門家に相談しましょう。
手根管の屋根の部分になる屈筋支帯の肥厚がひどく、どんなことをしても神経の圧迫が取れない場合は手術になる場合もあります。
ただし、重篤な場合を除き、手術よりも先に施術による改善を図ることがオススメです。
手根管症候群の症状を改善するための施術を行う専門家に相談しましょう。
母指球筋や屈筋支帯への施術や母指外転筋群のトレーニング、母指球筋の張りにつながる前腕から上腕、胸の部分まで施術を行っている治療家がオススメです。
手根管に電気を流す、マッサージするだけのアプローチでは改善が見込まれにくいのでご注意ください。
手根管症候群を起こりにくくする要素として演奏姿勢を見直すことも大切です。例をいくつかあげます。
下記の他にも、各々の演奏姿勢によって見直す点は異なるので、演奏姿勢に基づいてコンディショニングしている専門家に相談するのがオススメです。
弓に対してどう親指を当てているか、親指だけで弓をおさえていないかを見直しましょう。
また、ボウイングを行う際の手首・肘の使い方を見直すことも大切です。
手首には、指の力を抜いた状態で手のひら側に曲げると指が自然と伸び、手の甲側に反らすと指が曲がるというテノデーシスアクションという現象があります。
手首が手のひら側に過度に曲がった状態で弓を持とうとすると、指に必要以上の力を入れねばならず、疲労します。
しかし、手首を手の甲側に反らしすぎると本来のポジションから崩れて弾きにくくなるため、力まない適度な手首の角度を探し出す必要があります。
楽器を支えるために親指を楽器に当てることが多い管楽器ですが、親指に力みが生じやすい条件として、巻き肩があります。
巻き肩の状態が続くと、上腕・前腕の前面の筋肉に負担がかかりやすくなり、母指球筋群の力みにつながります。
また、ブレス・コントロール時にお腹を膨らますことばかりを意識せず、背中を丸めずに下腹部からしっかりと吐くように意識してみましょう。
呼吸本来の動きからの逸脱が、上半身から腕の力みを生み出し、最終的に手首・親指の力みへつながります。
手根管症候群に影響を及ぼしやすい母指球筋をストレッチするのも方法の一つです。
動画にて人差し指から小指までのストレッチと母指球筋のストレッチを紹介しています。
目安は20回2セットですが、練習中や練習後など指の動きにくさや疲れを感じたときにぜひやってみてください。
ただし、セルフケアだけではしびれや指の力みが抜けない場合は、我慢せず専門家に相談しましょう。
整体サロンHarmoniaでは、楽器奏者ひとりひとりの演奏姿勢・演奏動作に合わせたコンディショニングを行っています。演奏中・演奏後の負担にお悩みの方はぜひご相談ください。
整体サロンHarmoniaの楽器奏者のコンディショニングは、楽器演奏される一人ひとりの演奏姿勢・動作を確認しながら、楽器特有の身体の使い方に基づいて問題点を探し出し、施術します。
演奏動作から手根管症候群へつながる前腕・上腕・上半身の柔軟性に至るまで施術していきます。
手のひらだけの施術だけでは不十分とHarmoniaは考えています。
身体の各関節には、関節負担が大きくなるポジションが存在します。負担が最小限での演奏動作を身につけることで力みの軽減につながります。
実際の演奏動作を確認し、動きの中で負担がかかっている関節の使い方を解剖学・運動学に基づいて提案します。
〇〇奏法といった楽器に特化した奏法で変えるのではなく、もともと身体に備わっている関節の動きにしたがって姿勢を整えます。
結果、〇〇奏法が行いやすい身体の使い方になるはずです。
演奏が続くと、どうしても疲労は蓄積します。
セルフケアで日々練習後や本番後にケアができていれば不調は少ないでしょう。
しかし、スポーツ選手のような全身運動とは異なり、指や上半身など特定の部分の疲労が極端に大きくなります。
定期的なコンディショニングを行うことで、演奏パフォーマンスの維持・向上へつなげます。
整体サロンHarmonia(ハルモニア)は完全予約制です。以下の予約フォーム、LINE、お電話のいずれかでご予約ください。
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