フルート・クラリネット・サックス・オーボエ・ファゴットといった木管楽器やトランペット・トロンボーン・ホルン・チューバ・ユーフォニウムといった金管楽器などの管楽器は、呼吸が演奏の重要な要素を担います。
管楽器奏者には「以前より息が吸いにくくなった」「ロングトーンが昔より短くなってしまった」「息が吐きにくい」と感じている方もいらっしゃいます。どうして以前よりも息が吸いにくかったり吐きにくいなどの不調が起こるのでしょうか。
今回は、解剖学・運動学の観点から理学療法士の視点として管楽器演奏者が感じる息の吸いにくさ、息の吐きづらさの原因と対策についてご紹介します。
管楽器演奏において活用される呼吸は、努力呼吸と言われ自然呼吸では使われない筋肉を使用しています。肋骨の周囲についている筋肉や腹筋の他に、首の筋肉を使って強制的に息を吸ったり吐いたりしています。
努力吸気・努力呼気に使う筋肉は、以下のリストのようにたくさんあり、どの筋肉も肋骨に付着しています。
- 胸鎖乳突筋
- 大胸筋
- 小胸筋
- 腰方形筋
- 僧帽筋
- 前鋸筋
- 上後鋸筋
- 鎖骨下筋
- 肋骨挙筋
- 脊柱起立筋
- 腹直筋
- 外腹斜筋
- 内腹斜筋
- 腹横筋
- 胸横筋
- 広背筋
- 下後鋸筋
- 肋下筋
これらの筋肉が肋骨の動きを制御することで、胸郭を膨らませたりすぼませたりする圧力を肺に圧力をかけて、肺に空気を強制的に取り込んだり押し出します。
呼吸に関する詳しい内容については以下の記事もご覧いただくとより深まります。
【声楽家・舞台俳優・声優】呼吸が変わると発声・歌唱が変わる!息が吸いにくい原因、それは胸郭を固めていることが原因です。
胸郭は、胸骨・肋骨・胸椎で構成された部分をいい、構成された空間には肺が存在しています。肺に空気が入るのにあわせて横隔膜とともに胸郭が拡大と狭小と動きを伴っています。
胸郭が柔軟に動かない状態での演奏は、肺が広がりが制限されてしまうため空気が入りづらくなり負担となります。では胸郭を固めてしまうのはなぜなのでしょうか。
肺の動きに胸郭が関わっていることをお伝えしましたが、曲のリズムを取るときに前傾姿勢になりながら演奏していませんか?その前傾姿勢、意図してやっていないのであれば、知らずしらずのうちに自分自身で胸郭の動きを固めることにつながっています。
前傾姿勢を取ることで胸郭を狭小化させることにつながり、肺の広がりを妨げることになります。また、腹圧も高まりやすいため、より息が吸いにくくなります。
何気なくリズムを取るために背中を丸めているのであれば、極力やらないように演奏してみてください。
息が吸えていない中で肺の中の限りある空気を吐ききろうとするあまり、背中を丸めて内肋間筋や腹直筋や外腹斜筋、内肋間筋といった筋肉を過剰に使って腹圧を高めて肺への圧力を高めるように力を入れてしまいます。
疲労に伴い筋肉が硬くなると胸郭が広がりにくくなるため、息を吸う際に肺が広がりにくくなり息が吸いにくい感覚へつながります。
息が吸えない→努力的に吐く→硬くなる→息が吸えない…と負のサイクルに陥ります。しかしながら自覚がないのです。
楽器演奏する際に、座奏では呼吸が楽なのに立奏では呼吸が苦しくなるという方がいらっしゃいます。そういった方に共通するのは、つま先に体重を乗せて演奏をしているということです。
つま先に体重を乗せて演奏している場合、骨盤が前方へ並進移動していることが多く、姿勢として猫背と反り腰が合わさったようなスウェイバック姿勢となっています。
スウェイバック姿勢は胸郭を固め、上腹部が緊張しやすいのに対し下腹部の筋力が弱くなる傾向にあるため、ブレスコントロールが悪くなります。
女性の場合ですとヒールの高めの靴を履いて演奏している方に多く見られます。
言わずもがなですが、背中を丸めてしまうような前傾姿勢を取らないように一度演奏してみましょう。譜面を見る機会が多く、どうしても視線が下に向いてしまう意識しても前傾してしまう場合は、譜面台が低い可能性もありますので、譜面台の高さを調節してみましょう。
硬くなった胸郭は、意図的に動かして柔軟性を高めておく必要があります。
上半身の柔軟性を引き出すストレッチを以前ライブ配信にてご紹介しています。約1時間15分ほど解説しながら行っていますのでぜひ一度お試しください。
音がブレやすくなるため演奏中に重心を前後左右に移動させることを良しとしない指導者の方もおられるかと思いますが、立ったまま同じ姿勢を保持する負担を基準に考えると前後左右に揺れながら演奏すること自体は、負担の分散につながるため、本人が音のブレなく演奏できるのであれば問題ないのではないかと理学療法士としては考えます。
重要なのは、つま先に体重を乗せたまま演奏しないということです。
女性の場合、ヒールを履くとつま先に体重を載せやすくなりますが、体重を乗せるポイントは外くるぶし垂直にたどった足の裏の部分に体重が載っていると一番バランスがいい重心位置です。
もし重心を外くるぶしの延長線上に維持できない場合は、腓腹筋というふくらはぎにある筋肉や、膝を真っ直ぐに伸ばすために必要な内側広筋という筋肉の筋力、下部腹筋群の筋力が必要となるため多少の筋力トレーニングが必要になります。
息が吸いにくくなる原因について解説しました。息が吸いにくい原因を「年だからかな」と考えていらっしゃる楽器奏者の方もおられますが、年だからと諦めてしまうのはすごくもったいないです。
胸郭の柔軟性を引き出せばまだまだ快適に演奏を行うことができます。
違和感を感じたらハルモニアにご相談ください。胸郭の柔軟性を引き出すエクササイズやそれを維持するためのボディマッピング・ボディワークを行って力みの少ない演奏姿勢を獲得しましょう!
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